|
|
|
8、カズヤ合格に嫉妬!B
僕は一人になったとき、何日たってもカズヤへの嫉妬に狂い、そしてこの現実について考えていた。「早稲田の政経。夜間脱出。」本当に心から羨ましく、そして妬んだ。 確かに受験勉強には悔いはない。あれ以上は出来なかった。「ここまでやってもまだ受からない。僕には才能がない。」としっかりあきらめた。 しかしカズヤが受かった。ここで話は一転したのだ。
僕はここで正直に心に問いかけた。建て前ではない本音を問いかけてみた。 「才能がない。」そう言えばもう勉強しないで、「夜間」に残っていられる。楽になれる。 しかしそんなことよりも、一体僕は何がしたいんだ、どうなればいいんだ、と問いかけた。 答えは本当に簡単で、しかも当然のものであった。 「夜間を抜け出したい。」まさに原点だ。原点に帰ってきたのだ。
そしてその答えを「じゃあ何で夜間を抜け出したいのか」と問いつめてみた。何ゆえ「夜間」にこだわるのか。そして僕は正直になった。 「いい大学に入りたい。いいブランドを身につけたい。自分で何にも言わないでも、人から認められる様なブランドを手に入れたい。」 これが全ての本音だった。やりたい勉強のため、将来の方向のため、こんなことはどうでもよかった。ただ「いい大学に行きたい。ブランドが欲しい。」これだけだった。
本当にくだらない結論だった。こんな事は受験界ではタブ−とされていることだ。「大学とは勉強するところだ。大学名なんかじゃない。」こんな話は山ほど聞いた。しかしそんな事、僕には全く関係なかった。そんなレベルの高い話は、僕には考えられなかったのだ。 ともかく「大学」も僕の中では、「勉強するところ」なんて以前に、一つのブランドに過ぎなかった。
だってそうだろう。事実、「どこどこの大学です。」って聞いた瞬間、その人の評価はある程度決まる。「あぁすげぇ、頭いい。」自分で何も言わないでも、認めてくれる。 みんな「その人がどういう人間か」、まで突っ込んだりしない。何故ならそこまでみんな他人に関心ないからだ。自分で精一杯なのだ。
だけど他人と付き合わなきゃいけないから、そうなると自分以外の他人をどういう人か評価する必要がある。面倒くさいから、その人の持つ「ブランド」だけ見て、「この人はこんなもんか」と、簡単にすませる。学生なんて別にまだ社会に出ていないんだから、社会的地位は「金」でなんか決まらない。唯一「差」がつくのは「大学名」くらいだ。だから「大学名」は、自分を良く見せるブランドなのだ。誰だって自分を良く見せたい。「どこどこの大学に通っている」こんなことでもその人の評価は決まる。
事実、「学歴社会ではない。」といっても、やはり低いレベルの大学出身では、一流会社の面接さえ受けさせてくれない。まず学歴がないと、スタ−トにさえ立てない。こんな事から分かる様に、「大学名」はブランドの一種だ。
「くだらない」「大学名なんかで決まらない」もしそう考えて、「学歴」を否定しても、現実の社会に出れば、「大学名」から、「どれだけの地位にいるか、年収はどれくらいなのか」といった、言わばそんなブランドに変わるだけだ。
それでしか評価されないという事態は、何も変わらない。単にマンションに住もうと思っても、「入居審査」である程度の地位にいないと、住むことさえ許されない。「俺は地位はなくても、これだけ素晴らしい人間だ!」って叫んでも、誰も聞いてはくれない。それが現実だ。本当に甘くない。
どうすればいいか?
答えは簡単だ。いい大学に受かればいいのだ。 そうつまり「受かるまで受験をヤリ続ければいい」のだ。こんだけ受験勉強しても落ちた。だけど誰も「落ちたけど、斎藤君はすごいよね」なんて認められない。ならばやはりやるしかないのだ。
この受験とは「不合格」では終わらない。いや、終わることは出来ないのだ。「合格」しなければ終わらないのだ。受かればこんな苦しいコンプレックスから抜け出せる、受かれば楽になれるのだ。全ては受かってからだ。
受からなければ、この今までの一年間は単なるムダに終わる。何故なら評価されないからだ。ブランドにこだわる今、自分の評価はどうだってよかった。やはり他人の評価だ。 僕は思った。自分の評価なんて、まず他人の評価があってから出来るもんだ、と。
そして僕は受からないといけない、もう一つの理由があった。それはカズヤだ。彼は僕の人生の中で、本当にかけがえのない親友だ。今まで出会ったことのない同志だ。
このままでは住む世界が違えば、彼とは気まずくて、話すことさえ出来ない。この数日の様子を見れば分かる。結果として、彼は前に進み、僕はこの場に残った。このままでは差が開く。ならば僕も彼と同じ世界に、追いつけばいいのだ。そうすれば、彼と今まで通り友達でいられる。 これが本当の友達ではないだろうか。
人間必ず差が出る。いつまでも、仲良しこよしではいられない。そんなとき、「もう住む世界が違う、といって縁を切るのか?いや、自分も頑張って追いついてやろうと行動を起こさなければならないのではないか。 「いつまでも友達でいる」には、大変な努力が必要なんだ、とこの時初めて思った。僕が受かれば、彼とも笑って話せる。僕が1年目落ちたことも、笑い飛ばせる。 「彼とは友達でいたい。」そう思った僕は、やはり受かるしかなかった。 この時思った。「経過ではなく、結果なのだ」と。
もう二度と向かいたくないという机に、僕はまた座っていた。大っ嫌いで、苦痛のなにものでもない勉強を、僕は再び始めた。 こんなことはイヤだ。しかし、また皮肉なことだが、楽になるには、自分を救うには、受験勉強をヤラなければならないのだ。今すぐに机に向かわなければならない。
アルバイト募集中
-
バイト探しはモバイト!日払いだから働いた分だけ毎日遊べる★
- 学費が必要な学生さんなどへ。
←表紙に戻る | ↑このページの一番上へ| 次のページへ→
|
|
|