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13、勝利!
かすむ意識の中、僕は合格掲示板を見た。最難関の「地域文化学科英語」の合格者は、40人近く受けてわずか3名。見た瞬間分かった。
「あるわ!」
僕はその場に崩れ落ちた。掲示板に自分の番号はないもんだ、こう慣れきっていた。落ち続けた僕は、もう何も信じられなくなっていた。しかし今は違う!僕の番号が、目の前にあるのだ!見事完全合格だった。
思えば当然だった。偏差値80の受験生だ。実際、落ちるはずがない。しかしそんな余裕、僕には無かった。とにかく嬉しかった。異常なまでの派手なその喜び方に、外大生の奇異の視線を思わず集める。僕は狂喜の中にいた。人生が大きく動いていく実感がわいた。
もう僕は夜間生ではないのだ。偏差値70の大阪外語生なのだ。楽しいキャンパスライフはここから始まる、そう僕は自分に言い聞かせた。目の前がバラ色とはこの事だろうか。 「夜間から抜け出した」僕はついにやり遂げたのだ。
喜びに打ち震える手で、僕は友人達に電話しまくっていた。結果を出した今、ようやく胸を張れる。「まだやってたんだ、オマエもよくやるな。まあお疲れさま」 みんなは呆れながらも、口々にこうほめてくれた。屈辱に耐え切れず、友達と会う事はもちろん、その声さえ聞きたくなかった9カ月前。思えば本当に長い戦いだった。
シンジさんは食堂で、僕の凱旋を迎えてくれた。「やりましたね!やりましたね!」満面の笑みを浮かべながら、僕達は大声で叫んでいた。夜間の連中は、僕の結果を今か今かと待ち望んでいる。「落ちてくれ、落ちろ!」こう切願しているに違いない。
「行ってやるか」僕達が勝者になる瞬間だった。
クラスに入ると、誰にも聞こえる大声で、「受かった、受かった!夜間脱出成功!」と叫び散らした。僕はすぐさま、IQ、イガ、ヒルマの顔を見る。いつもの嫌らしい笑顔はなかった。悔しさと妬みで、顔が歪んでいるのだ。僕ははっと気付き、クラス全員を見回した。そう誰もがこちらを見つめ、顔を引きつらせている。
僕はためらわなかった。容赦など、どこにもない。「来年の4月から、僕は大阪外語大生。英語学科、偏差値70です!」、そう言い放って教室を出た。
次の日、模試事件を上回る800枚もの大量のビラが、神戸大学中に再び貼り出された。 真っ黒な下地に、白色の派手な文字。その風体は、模擬試験ビラと同じだ。しかしその内容は、模試を超える衝撃度だった。
「たかが模擬試験、受かってから言えよ、偏差値80なんてすごくない」 数々のご批判ありがとう。だからその通り本当の大学に、受かってやったぞ!僕の魂の叫びが、神戸大学中にこだまする。
「大阪外語大学、地域文化英語学科(偏差値70)合格!夜間生が勝利!」こんな見出しだった。またも大学中がパニックになった事は、言うまでもないだろう。
夜間生にもう敵はいなくなった。「やられたら、100倍にして返す。それが斎藤だ」、この意味に彼らがようやく気付いた。しかし時すでに遅し。彼らは卑屈に黙るしかないのだ。ただ僕も優しい。「合格したよ」それ以上の攻撃はしなかった。必要以上の自慢に酔ったりはしない。しかし彼らにとって、その一言でも十分なブロ−となって、叩き込まれていたのだ。僕達の勝利の日だった。
サ−クルでも僕は誉めたたえられた。つい数ヶ月前までは僕をバカにしていた女の子も、「やっぱり頭がいいんだね」と、笑みのない引きつった顔で、しきりにかつぎあげてくれる。
「連中と並んだ」、僕は確かな手応えを感じていた。「夜間を抜け出した。合格した」この心からの願いが満いたされた今、僕は全てが報われた。人生最高の充実の中にいた。
「ウソじゃないよな?夢じゃないよな?」まさに非現実である。
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