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22、堂々終戦!これが僕の人生だ!
3月23日東大合格発表日、この日は僕の誕生日だった。この「ドラマ」の結末を飾るにふさわしい、僕はそう感じた。「舞台」は全て整った。 この日、僕は一人で発表を待つ。その内心には、感極まるものがあった。
ここまで波に乗っている。「今の僕には不可能などない」、こんな傲慢にも似た言葉でさえ、確かな説得力をもって響いてくる。 「東大に受かれば何も言うことは無い。この地獄の日々が全て報われる。正義は最後に必ず勝つ。頂点に立つのは、この僕だ!」 僕は「最後の勝利」、そしてこのドラマの「結末」を待つだけだった。
恒例のごとく東大の学生応援団が、「今か、今か」と騒いでいる。そして時刻は10時を指す。ついに大学関係者が、合格掲示板の周りにあるロ−プを外した。全学部、同時合格発表だ。
受験者達が一斉に動き出す。すぐに歓喜の声が、あちらこちらから飛んでくる。僕は深呼吸をして、自分自身を落ち着けた。その時、「受かる直感」が脳裏をよぎる。ドラマが最高の加速を始めた。僕は群集をかき分け、掲示板の一番前に立つ。顔を上げた。
「あ・・・・・」
そこに番号はなかった...。
何かの間違いだ、僕はもう一度番号を確かめた。何度も何度も確かめた。しかしいくら目を凝らしても、そこにはあるはずの番号がなかった。僕の番号だけがなかった。
「はははははっ」、その時僕は笑っていた。「・・・・落ちてるよ、何だ落ちてるよ」僕はおかしくてたまらなかった。ここまで、ことごとく受験大学は合格してきた。正義は必ず勝つ、確かにその通りだ。偏差値80まで上げた、それだけの力があれば落ちるはずはなかった。 ただ「どこまででも受かる」と思い込んだ。これが間違いだったのだ。僕は肝心な事を忘れていた。
「100やれば、10返ってくる」
この受験はこの一言から始まったはずだ。そう、これはそんな「ドラマ」なのだ。そしてその主役は他でもない「僕自身」なのだ。
最後まで僕の人生はこれだった。これがくつがえされる事は、とうとう最後の最後までなかった。何を思い上がっていたんだ、東大合格?それじゃあ100やって100返ってきてるじゃないか、僕は痛感していた。
これだけ勢いに乗ったが、それでも100やって100、ましてそれ以上は絶対に返ってこなかった。だから早稲田、外大に落ち着いたんだ。長い長いドラマだった。しかし考えてみれば、「100やって10返ってくる」、結局これは何も変わらなかったのだ。
そんな馬鹿馬鹿しさが、たまらなくおもしろかった。だから僕は笑っていた。「番号がない」、この光景がドラマの結末に一番ふさわしかったのだ。
「やっぱりね」何度もこうつぶやいた。
そして「祭り」の様なその舞台から、僕は静かに引き返していく。
そんな帰り道、僕はふと考えた。「これからどうする」
さらにもう一年やれば東大に受かるかも、そんな事も頭をよぎった。しかしその時、僕は心から言えた。「すいません、もう出来ません、勉強嫌いなんです」、と。 「オマエはバカだね、惨めだね、東大落ちてさ」、そう言われても、その時の僕は何も悔しくはなかった。「そうなんです、僕バカなんで・・・」、この一言が言える。むしろ卑屈にさえなれた。だけど気分は心から晴れやかである。
何故なら、僕は目指していたブランドが手に入ったからだ。確かに東大は落ちた。しかし去年かなわなかった場所にまで、死ぬ気で這い上がった。僕を支える確かなものが、今は手に出来た。それは何を言われても、動じない「余裕」だった。自分とはこういう人間だ、という確かな「自己」だった。
「俺は本当は頭が良いんだ、能力があるんだ」「ブランドより、人間性だよ」、大人になるにつれて、いつしか自分を守るために、たくさんの「言い訳」を身にまとった。しかし、ようやく決着がついた。僕の人生からコンプレックスが消え去ったのだ。虚飾はもはや一つもない。目の前には、裸の自分自身の姿があった。自分は一体何者なのか、何が自分にとって一番幸せなのか、ようやく分かった。
僕のドラマは終わった。33カ月。本当に長かった。しかし「ゴ−ル」は「スタ−ト」である。新しい自分がそこにいる。そう、ここから僕の人生は始まるのだ。何が起きるか分からない。だけど僕には不安はなかった。何故かって?
答えは簡単だ。確かな「自分」がいるからだ。33カ月もの時間をかけて、ようやく出会えたのは、紛れもない本当の「自分自身」だった。 いつまでも僕の側にはそんな「自分」がいる。苦しくなった時、何か壁にぶつかった時、「自分自身」に尋ねてみればいい。「どうしようか」って聞いてみるんだ。そうしたら、必ず答えが見つかるだろう。
人生って楽しいな、そんな言葉が僕を包み込む。
何だ、普通じゃないか。僕はそう思った。 ドラマが終わったその後に、いつもの変わらぬ僕がいた。 何もかも「普通」の僕がいた。
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